富士フイルム機関誌「FGひろば」2002年8月号 掲載
『〜今注目される会社CLOSE UP〜』
熱い職人魂と、先験的なデジタル戦略で刷版専業のCTP普及に挑む、少数精鋭のプロ集団。

「少数精鋭」という表現は、ときに、小規模な企業に対する儀礼的な褒め言葉として使われることも少なくない。だが(株)宗美の場合は別だ。とくに2年前に開設されたばかりの『CTP出力センター』は、スキャナや修正用Mac、各種DDCP、プレートセッターを、実質4〜5名でフル稼働させる。正真正銘の少数精鋭軍団である。この小さな企業が業界の注目を集めている最大の理由は、「刷版専業社が戦略的にCTPを導入し、すでにそれを使いこなしている」という事実。たった2年のつうちに、どのようにCTP化を進め、どのような営業展開を図ってきたのか。代表取締役・西澤泉氏、取締役CTP開発本部長・黒川憲治氏、CTP開発主任・氏家真二氏、CTP技術部長・戸田雅人氏、オペレーターの大内明日香氏、伊藤義明氏に、お話を伺った。
「アルミ平凹版〜PS版」の時代から付加価値の高い刷版技術を徹底追及
 創業は昭和50年。35歳の若さで製版会社から独立した西澤氏は、頼れるパートナーと2人で小さな刷版専業者をスタートさせた。が、確保できていたはずの取引先があてにならず、1ヶ月ほどで仕事ゼロの大ピンチに。

「仕事がなくたったとき、サラリーマン時代にお世話になった人たちが助けてくださったんです。ありがたかったですね。最初の頃は、丸めた刷版を自転車の荷台に載せて配達したり(笑)。大した苦労だったと思いませんが、その後、順調に仕事が増えていきました」

 4年後の昭和54年に社名を宗美とし、平成13年には株式会社へ。

 これまでに、大きな転機は2つあった。その一つは、58年ぐらいまで使用していたアルミ平凹版をPS版へ切り替えたこと。長年アルミ凹版を使いこなしてきた頑固な職人たちを説得するのに苦労したという。だが「時代は必ずPS版に向かう」という西澤社長の信念が通じ、昭和60年には全面切り替えに成功。ただし、「アルミ平凹版のような量感が欲しい」という客先の要望を、「PS版では無理」とはねつけないのが西澤流のこだわりである。

 「2度通し、と呼んでいるのですが、現像済みのPS版を、再度、弱い現像液に通して網点をいじめてやると、アルミ凹版風のメリハリが得られるんですよ。邪道ですけどね(笑)」

 まさに刷版専業のプロ意識。創業当時から今もって、同社に脈々と息づいているのは、紛れもなく西澤社長の職人魂だ。
CTP導入に合わせ専門部隊を育成。地道な営業展開に確かな手応え

 「2つの転機」のうち、もう一つは、言うまでもなくCTPへの対応である。西澤社長は、PS化の流れと同じように「刷版業界にもCTPの時代が来る」ことを確信した。だが、事はPS版切り替えよりもかなり複雑だ。そこで西澤社長は、知人を通じ、大手印刷会社でCTPを立ち上げた経験を持ちCTPを熟知していた黒川氏を平成12年に招き入れる。黒川氏がすぐにとりかかったのは、人材の確保・育成と、CTPの営業開発だった。

「CTPの存在も品質面でのメリットもほとんど知られておらず、どこに売り込めばいいのだろう、という感じでしたね。そこで、飛び込み営業と平行して、手探りで、とにかく積極的な営業展開を図ることにしたわけです。例えば、印刷会社だけでなく、新宿区周辺の広告代理店や出版社へランダムにFAXでチラシを送付させていただいたり、また、お客様を対象にCTP講習会を実施したりもしました。それらの効果により少しずつCTP出力センターの存在が知られはじめ、月に1点だったCTPの仕事が、2点、3点と増え、気がついたら出力機がもう一台必要なほどになっていました(取材後の7月にLuxel T-9000CTP HSを増設)」(黒川取締役)

 アナログ刷版における実績により中心的CTPオペレーターに抜擢され、開発主任としても外回りでCTPの売り込みを率先して行ってきた氏家氏が続ける。
「お客さまは、まずコストに興味を持ちますね。次に品質。ですから初めにフイルム出力に比べCTPならこれぐらいの値段で出力できるのだ、ということをきちんとご説明します。ただし、価格設定は難しいところがあるのですが」

 低価格だけではいけない、と西澤社長。
「フイルム出力がなくなるとは言え、その分、データ修正などに手をかけています」(西澤社長)

 CTPに対する具体的な評価については、技術部長の戸田氏に伺った。
「確実な納期短縮、見当精度の高さ、ゴミ問題の解消、それとやはり品質ですね。印刷現場の人が『フイルム出力のときより高品質だ』と言ってくれると、あらためてCTPのクオリティを実感します」アナログ刷版での豊富な経験をCTP操作に活かす氏家主任と、フイルムセッターで磨いた技術をいかんなく発揮する戸田部長。明らかにお二人はCTP出力センターの前進を支える両輪である。

お客さまの繁栄により自社も繁栄する。創業時の志は、CTP時代も変わらない
 この半年のうちに、CTP出力センターに頼もしい人材が加わった。5月入社の伊藤さんは、住宅関係の営業からオペレーターへと転身。「CTPの成長性を肌で感じています。職場の雰囲気も、驚くほど家族的で、すごくまとまりがある。一日も早く先輩たちのような戦力になりたいですね」

 こんな若い世代を、教育係りの黒川氏はどう見ているのか。
「いまの人たちは、デジタルに親しんでいるせいか、大変に反応がいい。私どもとしては、できるだけ彼らが伸び伸び力を出せる環境を提供してあげなければなりません。月に一度、言いたいことを自由に言い合える飲み会を開き続けているのも、その一環です。成果はあります。皆、お客さまともオープンに話ができ、あいまいな部分を残さず、厳しいニーズにもきちんとした仕事でお応えできている。客観的に見ても、鍛えられた刷版のプロ集団、という感じがしますね」

「印刷の狙いを的確に理解しそれを刷版に反映させなければ本当のプロとは言えません。大胆なメリハリが必要なのか、階調を優先したいのかによって、露光タイムを変えたり網点を可変させたり、CTPのよさ、PS版のよさを使い分け、自在にニーズにお応えするのが私たちの仕事なんです。そして何より事故の少ない版を納めること。いい印刷が刷れ、事故が無ければお客さまの利益が上がるわけですからね。その品質保証の体制が、CTPによってさらに強化されたと思っています」(西澤社長)

 300線Co-Re SCREENINGを新たな武器に加え、CTP出力がますます軌道に乗りつつあるいま、スキャナ(LanoviaMAX)による“分解込みの仕事”も手がけている同社のCTP出力センター。もちろんDDCP(Luxel SPEEDPROOF8000)もフル回転だ。デジタルコンテンツ作成や編集なども営業戦略の視野に入れながら、軸になるのは刷版分野で築き上げた不動の技術力。「薄紙印刷時に、紙の伸びを考慮しながら4版すべて微妙に見当の違う刷版を作成したこともある」などというエピソードの一つ一つに、西澤社長の刷版に対する“技術に裏付けられた自信と情熱”が溢れている。そんな熱い心意気は、社員に浸透しているのだろうか。「はい。充分に伝わっているはずです」やや照れくさそうに、しかし迷うことなくはっきりと西澤社長は言い切った。